『書燈』 No.19(1997.10.1)

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学内教官著作寄贈図書の紹介


『地場産業 -地域からみた戦後日本経済分析-』下平尾勲著(経済学部教授)
   
東京 新評論 1996.10
   請求番号 602.1/SH51Z 学内刊行物コーナー

 地域には、人々の生活の必要を充足するため、桶樽、和紙、竹細工等多くの地場産業があった。わが国の高度経済成長、不況、石油危機や国際化のうねりの中で、その多くは衰退、消滅した。そこでわが国の戦後の大きな節目に焦点をあて、地場産業がどのように変化し、生きのびてきたかを研究したのが本書である。

 その場合、地場産業の成長、発展ではなく、衰退・消滅という視点から研究した。地場産業の衰退条件は成長条件の中で形成され、成長条件そのものであった。衰退条件に着眼して振興政策を考えた。

 またわが国のリーデイング産業に対して、受動的、忍従的な行動を余儀なくされ、相対的に軽視されてきた地場産業・地域産業の視点から、日本経済の動向を分析した。経済成長の出発点は、通説とされている1955年ではなく、1968年からであった。


『マルクス・エンゲルスの思想形成 -近代社会批判の展開-』 中川弘著(経済学部教授)
   東京 創風社 1997.4
   請求番号 309.3/N32M 学内刊行物コーナー

 本著は、初期のマルクスとエンゲルスの主要な著作や論文等に即して、両者の社会・経済思想の形成の歩みを考察した論文10編を収録したものである。

 本著の内容は、人間の自己疎外論を中心としたマルクスによる近代社会批判の展開(第一篇)、唯物論的歴史観の確立=唯物論的歴史把握の基礎視座の確立(第二篇)、エンゲルスによる近代社会批判の展開とその内容のマルクスとの異同(第三篇)、両者の経済理論の形成=1840年代の到達点の確定(第四篇)、という四つの柱から構成されているが、全体を通して、近代社会の揚棄の上に到来する未来社会が、人間を自己疎外から解放するという意味での「人間解放」を、歴史発展の必然的所産として実現するという、両者の将来展望の内容の骨格がどのようなものであったかが検討され、解明されている。


脱「コンビニ」の書?『フランス革命と財産権』 田村理著(行政社会学部助教授)
   
東京 創文社 1997.2
   請求番号 323.3/TA82F 学内刊行物コーナー

 図書館に献本した拙著は、現代日本の憲法解釈学的問題意識で、フランス革命史の中の財産権概念を歪めるのはよそう!と主張する本だ。歪みの原因の一つは、「役に立つ」コンプレックスだと思う(『創文』No.388参照。*ご希望の方には差し上げます)。

 学生さんからは、「わかりやすくて、面白くて、役に立つ」授業を求められていると、つくづく感じる。いつでも、何でも、すぐ、そこそこ揃う「コンビニ」のようなやつだ。法学界でも、外国法の研究をほぼ必ずやるが、それが必然的に日本の法解釈に役立つことになっている。いたって「コンビニ」だ。

 僕は化学調味料たっぷりの「コンビニ」弁当に最近少し食傷ぎみだ。自分のもつ「わかりやすくて、面白くて、役に立つ」という価値それ自体を問わない学問は、「コンビニ」弁当と一緒ですぐ飽きる。本来、学問的作業はけっして「コンビニ」ではない。

 拙著では、「便利な」化学調味料を使わず、てま暇かけて、素材の味を引き出そうとしたつもりだ。「コンビニ」に飽きた人に、ためしていただきたい。


【訳書】『全訳 統治論』 ジョン・ロック著 伊藤宏之訳(教育学部教授)
   
東京 柏書房 1997.3
   請求番号 311/L78Z 学内刊行物コーナー


『M.ウェーバー ロシア革命論Ⅰ』 雀部幸隆/小島定訳(行政社会学部教授)
   
名古屋 名古屋大学出版会 1997.4
   請求番号 238/W51R/1 学内刊行物コーナー

 

図書館では学内関係者の著作物を収集しております。出版されました際は、ぜひ図書館にご恵贈くださるようお願いいたします。


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