『書燈』 No.24(2000.4.1)

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文字のない生命は死である
前館長 長尾 光之

 附属図書館エントランスロビー・カウンター上の壁にグリーンの文字が弓形にかかげられています。

"Vita Sine Litteris Mors Est"

 これはラテン語の文字で、日本語に訳すと「文字のない生命は死である」となり、文字や書物の重要性を指摘し、学生諸君をはじめとするみなさんが、大学図書館に親しんでもらうことを呼びかけています。

 これは古代ローマの哲学者・文人であるセネカの残した言葉です。

 セネカはスペインのコルドバに生まれ、ローマで修辞学・哲学を学びました。なかでも、とくにストア派哲学者の影響を受けました。財務官として政界入りをし、のちの暴帝ネロの教育係も担当しました。公職を離れたあとにはローマ近郊の別荘で著作に専念しました。この間、『道徳書簡』20巻を書きました。この書には彼の全英知がやさしい文体で述べられています。

 セネカの哲学的著書は16〜18世紀に広く愛読され、とくにモンテーニュには強い影響を与えました。彼は論理学や自然研究よりも倫理に強い関心を寄せ、とくに死にたいして人間がとるべき態度に大きな関心をはらいました。そのほか、戯曲をも書き、後世のラシーヌやシェイクスピアなどに大きな影響をあたえました。

gakujo@lib.fukushima-u.ac.jp

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