『書燈』 No.25(2000.10.1)

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図書館の目的
経済学部 東田啓作  

 大学の学部時代に私が図書館を利用する目的は、大きく分けて3つ存在した。第1にレポートや卒論のために必要な資料(書籍、雑誌、新聞記事など)を探すこと、第2に大学院受験に向けた勉強をすること、第3に友人と情報交換(単なる会話)を楽しむことであった。

 レポートや卒論のための資料の検索は、書籍であればコンピュータ検索がもっともメジャーである。なんとなくしかわかっていないテーマであっても、さまざまなキーワードから短時間のうちに数多くの書籍を検索することができる。しかし、書籍のすべてが入力されていない場合もあり、その場合には目録で検索するということになる。目録検索は、1枚1枚めくっていく楽しみはあるが、時間がかかるため便利な検索方法とはいえない。

 一方、新聞記事を検索する場合にも2通りの方法がある。第1にCD−ROMで検索する方法である。福島大学の図書館の場合、カウンターで必要な新聞(日本経済新聞と朝日新聞)の必要な年をカウンターの人に言えば、そのCD−ROMを借りることができる。あとはコンピュータを使ってキーワード検索をすればよい。必要な年次の必要な新聞のCD−ROMが存在すればよいが、ない場合には縮刷版をめくっていくしかない。これはかなり面倒くさい作業であるが、楽しみがないわけではない。かなり以前の新聞をめくっていると非常に懐かしい記事に出会えたりする。本来の目的を忘れてその記事を読みふけってしまったりすることもある。新聞記事以外にも、判例文献や統計年鑑のCD−ROMなどもあるのでぜひ使ってみるとよい。それから、ものすごく暇ができてしまったら縮刷版をめくってみるのもよいかもしれない。

 第2の目的は勉強である。図書館で勉強することのメリットは、勉強を進めていく上でさらに詳しく調べる必要が生じた場合に、すぐにそれを実行できることにある。自宅や喫茶店などで勉強をしていると、参考書程度のものはすぐ手の届くところに存在するが、新聞記事の縮刷版、判例、条約集といったものまで存在することはまれである。また、コピーをする必要が生じた場合にも自宅にコピー機が存在することはめったにない。時間がたつと何を調べなければならなかったかが曖昧になってしまったり、調べるのが面倒くさくなってしまったりする。本格的に勉強をしていると、体系付けられた理論やその実例、正確な条文などインターネットからは手に入れにくい資料がどうしても必要になってくる。それがすぐにできるという点で、図書館は勉強をするのに適した場所なのである。

 第3の目的についてであるが、私の在籍した大学の図書館には学生休憩室なるものが存在していた。そこは飲食・喫煙が可能で、勉強の合間にさまざまな人間がやってくる。リラックスできるように、大昔は立派であっただろうと推測できるソファーも置いてくれてあった。勉強をしているとどうしても自分だけ取り残されているような気分になるのだが、そこに10分も座っていると大学院や公務員を目指して同じように勉強をしている友人が最低でも1人はやってくる。会話が始まると勉強と休憩のどちらが本当の目的かわからなくなってきたりもし、結構そこに行くのが楽しみであった。

 今では図書館の利用目的は第1の資料の捜索に限られてしまい、少し寂しいような気もする。学生の皆さんにはぜひさまざまな方法で図書館を使いこなしてほしいものである。

gakujo@lib.fukushima-u.ac.jp

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