『書燈』 No.25(2000.10.1)

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学内教官著作寄贈図書の紹介

『日本の詩 近代篇』
大阪 和泉書院 2000.3
澤 正宏 他共編著(教育学部教授)

 時代の表現を変えていった代表的な詩の鑑賞を中心としながら、詩人の紹介もあり、日本の近・現代詩を通史的にも論じている書物が欲しいと考えていた私と、友人の和田博文氏とが出した本である。初版(京都・白地社)は1990年4月に出され、一般書としてはもとより、大学のテキストにも採用されたためか三刷まで出された。後、出版社が倒れ絶版になったが本書を希望する方々が多かったので、この度、増補改訂して出版したものである。

 写真を多く入れたので、著作権、肖像権、再掲載権の交渉に手間どり、その上、初出形にこだわったので活字の組み方が大変であった。現代詩人の河津聖恵さんが、「こんな本が読みたかったのです」と返事をくださったので大変うれしかった。現代篇の再刊も考えているが、出版までにまた3年くらいかかるのかと思うと踏み切れないところである。

(請求番号911.56/SA93N/1 学内刊行物コーナー)

 

『教科書 社会心理学』
京都 北大路書房 2000.3
飛田 操 他共編(教育学部助教授)

 社会心理学は、とても面白い学問です。

 この学問の懐の大きさと深さに圧倒され続けています。やればやるほど、面白い。

 この面白さを少しでも多くの人に伝えたくて、この本は企画されました。

 社会心理学の面白さのひとつは、扱っている研究の対象や現象がとても幅広いことにあります。この本を手に取ったら、まずは、もくじをご覧になってみてください。自己、二者関係、小集団、組織、社会、そして、異文化といった多様な問題が、社会心理学のテーマとなっているのです。

 社会心理学のもうひとつの面白さは、アプローチの方法にあります。巧妙に計画された実験、洗練された調査、壮大な理論などを、できるだけ詳しく紹介しようとしています。

 この面白さが、少しでも伝わればいいなと思います。

(請求番号361.4/KO12K 学内刊行物コーナー)

 

『1920年代の金融恐慌』
東京 日本経済評論社 2000.6
栗原るみ 著 (行政社会学部教授)

 「日本のバブルは経済の規模が円高で急拡大したのに、配分では格差が拡大し、過剰な資金が土地や株式にながれたためだから、格差問題にどう対処するかが不況脱却の鍵だろう。なのにどうして行財政改革なの?」英国に留学中、橋本財政について聞かれた質問。説明したかったが、できなかった。

 「橋本内閣は、1920年代の井上財政の勉強が足りないのかもしれません」と答えた。1920年代の悲劇の意味は今にどう生きているのか。帰国後『井上準之助論叢』を読み始め、国際化の荒波に呑み込まれた福島県蚕糸業の衰退過程とかみ合わせて、現代に生きる1920年代論をなんとか形にするのに、今までかかった。過去の総括を生かす歴史意識の彼我の違いについて考えるため、たくさん勉強した。

 現代から出発する、総合的学際的など、歴史学が重要視してきた方法で歴史を顧みたいという衝動の結果が今のわたしにとって、ようやく本書である。

(請求番号632/KU61S 学内刊行物コーナー)

 

『組織と権威』
東京 文眞堂 2000.4
磯村和人 著 (経済学部助教授)

組織のなかで活動していると、何かとストレスがたまります。嫌なことがあると、誰かのせいにしたくなります。ときには、酒の席で上司の悪口をいい、同僚に愚痴の一つもこぼしてしまいます。しかし、誰のせいでもないというのが真実ではないでしょうか。なぜなら、誰もが組織のなかで思い通りに行動できているわけではないからです。組織の活動は複雑にはりめぐらされた対人関係のネットワークのなかで行われているのです。

 例えば、私たちはつい直接対面している上司との関係だけで物事を考えてしまったりします。しかし、上司と部下の関係は複雑にはりめぐらされた対人関係のネットワークから切り取られた一断面にしかすぎません。それぞれの人が他の多くの人々と複雑に関係を結びながら活動しています。本書は対人関係のネットワークのなかから組織がどのように形成され、変化していくか、そのダイナミズムを三者関係の視点から分析したものです。

(請求番号336.3/I85S 学内刊行物コーナー)

gakujo@lib.fukushima-u.ac.jp

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