『書燈』 No.27(2001.10.1)

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ギリス・バーミンガム大学図書館瞥見
飯島充男(経済学部教授)

 バーミンガム大学はオックスフォードやケンブリッジのような”Ancient universities”ではありませんが、その次の画期に「大学」として格付けされた

 ”Redbrick universities”(マンチェスター、リーズ等、産業革命を経て大学教育の必要性が大いに高まった工業都市に創設される)の一つで、私の滞在中の西暦2000年にエリザベス女王を迎え、100周年記念行事を行っています。学生数は約2万500人、うち外国人学生は3,300人、大学院生が6,000人近くもいます。研究スタッフも2,000人を大きく越えており、福島大学の7〜8倍規模の総合大学といえます。

 中央図書館は時計台を中心とする大学の中心施設の一画に位置し、経済学部と行政社会学部棟を合わせたくらいのスペースを持っているように感じました。他に「図書館 Library」と名の付くものは11もありますし、図書館と情報サービス部局(全学を統括するネットワークもここで管理)が一体化していて、スタッフ数は確かなことは判りません。しかし、年4回発行の立派な広報誌の他に、研究誌なども独自に刊行されていて、その数は50名を大きく越えているのではないかと推測されます。

 以下、福島大学図書館との違いに留意しつつ、思いつくままに記述します。

(1) 図書館の開館時間は、春、夏、秋学期期間中は、月曜から木曜までが8:30〜22:30、金曜8:30〜19:00、土曜9:00〜17:00、日曜13:00〜17:00となっていて、夜型人間の私としては大変助かった。クリスマス期には、例えば12月22日から1月2日等の期間は完全閉館、春夏冬休みの間は日曜日は閉館だが、それでも月曜から金曜までは9:00〜19:00、土曜は10:00〜13:00に開館しており、結構重宝した。

(2) 開架図書館で、ともかくあちこちに座席を置いており、座席数が非常に多い。学期の終わり時期にはここがレポート作成の学生で埋まる。ただし夏休み等は閑散としている。

(3) 新聞雑誌室には、The Guardian、The Daily Telegraph等のいわゆる高級紙が、日曜紙も含めてすべて備えられている。その月の新聞はまとまっており、さかのぼって閲覧できる(福島大学でもそれは可能だが、一カ所に備えられてはいない)。整理は良くなかったが、欧米主要紙の他、朝日新聞衛星版、台湾中央日報、中国人民日報などもある。

(4) 官庁統計類は2階のフロアーに集中している。驚いたのはEUで纏めている統計が大変多かったこと。統計を共通にして比較尺度を同一にするのは容易なことではなく、EUの統合度が高いのをこんなところからも実感。EU統計、国連統計そして日本を含む諸外国の統計がイギリス政府統計と同じ基準で配架されており、国際比較が「当たり前」といった感覚は新鮮。充実の必要性を感じた。

(5) 図書館の利用案内が、政治、経済等20以上のテーマ毎に、また資料種類毎に、あるいは学部学生、

大学院、生涯学習者等利用者別等に、多数置かれている。とくに検索方法の説明が丁寧で便利。

(6) 政府白書は、日本のように毎年刊行されるといったことはないためか、一般図書と同じ棚にばらばらに配架されている。その他機関の報告書類も一般図書と同じ扱い。分類記号は例えば〈GB342.S6〉等に何十冊とあり、大変探しにくい。ただしコンピューター検索は非常に容易。とくに福島大学に無い、「発行年での検索」は至便で、一つのテーマについての近年の調査・研究動向を手早く探っていく上で重宝した(http://library.bham.ac.uk参照)。

(7) 図書検索のための利用者用コンピューターは20台以上あった。またコピー機が、入口すぐ右手の大きな部屋に9台置かれており、カラーコピー機、グラフィック機能を備えたコンピューター、更にはカッター、はさみ等も置かれる。コピーは学生だけでなくスタッフも含め、すべてプリペイド・カードを使用する(各学部は基本的に独立採算性)。

(8) 貸出(借り出し)は、3ヶ月もの、1週間、一日、不可能、と4種類で、研究スタッフといえども自分の研究室に借り出し図書を長期に置き、私物のように扱うことはできない。複数冊購入の度合いも福島大学よりも少ない。貸出冊数に若干の格差はあったが、コピーなども含め全体として教職員、学生、院生を同等に扱うことが多いように思われた。

(9) 相互貸借は理由不明だが、大英図書館(British Library。British Museumから分肢)経由のみで、時間もかかり不便であった。

 

gakujo@lib.fukushima-u.ac.jp

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