福島大学附属図書館報 『書燈』 No.30(2003.4.1)

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『日本近代都市計画資料集成』
(全87冊)
不二出版編集・発行

今西 一男

 現代都市は、単に最近の建設活動の結果として出現したものではない。長年にわたる都市活動の総体として都市は現存しているのである。したがって都市を研究対象とするにあたっては、その歴史をひも解かない訳にはいかない。それはわが国の都市研究でも同様だが、特に戦前から戦後にかけての歴史を網羅すると同時に、その所収をなしている資料が乏しかった。こうした研究者・実務家たちの要望を受けて編まれた資料が、このほどわが付属図書館に所蔵されることになった『日本近代都市計画資料集成』である。

  この資料は、『都市公論』(大正8年〜昭和20年)、『復興情報』(昭和20年〜21年)、『新都市』(昭和22年〜35年)を復刻・合本として発行したものである。ただし、これらはもちろん寄せ集めではなく、脈絡を持つ一貫した資料である。

  日本近代都市計画の生みの親である後藤新平を会長に、内務省の外郭団体として大正6年に設立された「都市研究会」(現・都市計画協会)は戦前の都市計画・市政問題全般に影響力を持つ議論を展開した。その論壇こそ『都市公論』である。そこで扱われた、例えば都市公園、区画整理、住宅問題、緑化問題といった特集は、それら今日に続くテーマの基礎を知る上で重要な資料である。

  そして戦後、わが国の都市計画は戦災復興の重要な役割を担うことになる。そのための情報を提供したものが戦災復興院発行の『復興情報』である。その発行から1年後、「復興情報・都市公論・合併改題」として都市計画協会から創刊されたものが『新都市』である。つまりこれら3誌は都市研究会の流れを汲み、『新都市』にあっても都市計画にとどまらない論説が掲載されている。この資料には昭和35年までの20巻が収録されたが、いずれも戦災復興から高度経済成長に至る都市全般の論点にあたるための貴重な資料である。

  実はこれら一連の資料を所蔵する図書館はまだ少ない。この資料を十分に活用し、また新たな都市研究の展開を図ることを私もめざしたい。                                         (行政社会学部助教授)

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