福島大学附属図書館報 『書燈』 No.30(2003.4.1)

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その昔 福島大学の近くにあった図書館(その1)
あぶくま山系農村図書館
 
渡辺 武房

 1959(昭34)年5月21日から1970年頃までの間、安達郡東和町木幡関屋140において活動した私設図書館のことです。 同館は同所に住む丹治武正・礼子夫妻(故人)が、本に恵まれない農村の子どもたちのために、約300冊の図書を用意して自宅(約20㎡)を開放して始めたもので、最盛期には約3,600冊を提供しました。 蔵書は児童書、小説それに農業関係専門書が主でしたが、図鑑、百科事典などの参考図書もありました。

  いつでも、だれでもが自由に利用できるように毎日開放されていて、小・中学生が1日平均8〜10人利用しました。 夏休みの宿題をしたり、研究課題の調査をする学習の場でもありました。 一般図書や資料も所蔵し、集落の人たちに無料で貸し出しました。 貸出期間に制限はなく、何日間でも利用ができました。

 1966年1月からは、東和町出身の人やこの町に関係ある人の消息、町に伝

わる昔話、針道の馬市などの記事を載せた、機関誌『あぶくまの山さと』を月1

丹治武正・礼子ご夫妻

回発行し、約1,000人の愛読者のもとに配布しました。 これらの一部は郡山市中央図書館に所蔵されています。  また、斉藤一郎兵衛著『郷土の史跡をたずねて』(パンフレット)を300部刊行しました。

 (参考資料)
 ・「人気の私設図書館 あぶくま山系農村図書館」 (1967.11.1付『福島民友新聞』)
 ・「あぶくま山系農村図書館」 (丹治武正 1998.12 調査・回答)

               (図書館専門員)

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