福島大学附属図書館報 『書燈』 No.31(2003.10.1)

前記事⇔⇔次記事

カナダ・ビクトリア大学を訪ねて 〜海外研修報告〜
総務係 芦原ひろみ

カナダというと、「寒い」というイメージはないでしょうか? もちろん寒いところはとてつもなく寒いと思うのですが、カナダ西海岸のバンクーバー島にあるビクトリアは、カナダの中では比較的温暖な地方で、私たちが訪れた2月下旬は、福島よりも暖かく感じられました。この度、今年の2月24・25日の2日間にわたって、学術振興基金と学長裁量経費により、福島大学の各部局の職員5名と共にビクトリア大学を訪れる機会を得ました。

 馬車が走り、英国の雰囲気漂うこのビクトリアに、福島大学と協定を結んでいるビクトリア大学はあります。広々とした敷地には緑も多く、あちこちでウサギを見かけるほのぼのとした環境でした。

 ビクトリア大学は学生数18,000人、10の学部を持つ、カナダでは中規模の総合大学です。また、留学生の受け入れなども積極的に行っている国際的な大学でもあります。図書館については、中央館であるMcPherson Libraryの方々に話を聞き、館内を見学することができました。

 McPherson Libraryは大学のほぼ中央にあります。図書約160万冊、マイクロ資料170万点、レコード・CD・ビデオなどの視聴覚資料約5万点を所蔵しており、地上4階、地下1階の建物にこれらの資料が収納されています。図書館の前には噴水のある広場があり、ここは学生たちの憩いの場になっているようで、読書をしたり、話をしたり、踊っていたりとそれぞれの時間を過ごしていました。

 ゲートを通って図書館内に入ると、左手に貸し出しカウンターがあり、正面にはレファレンスカウンターが2つ、その周りには広々としたスペースにコンピュータが並び、そして奥には書架が広がっています。1Fにはこの他にカレント雑誌や新聞のスペース、また、リザーブ室(各講座で読ませる教科書以外の資料がおいてある場所)などがあります。図書とカレント以外の雑誌は、全て請求番号が付けられ、その順番で各フロアにわたって配架されており、利用者は図書・雑誌の区別なく資料にあたれるようになっています。さらに、地下にはマイクロ資料室・音楽関係の資料室・Special collectionなどといった部屋がありました。どの部屋も自由に入ることができ、それぞれ職員がいて利用者に対応しているようです。また、館内のいたるところに絵が飾られているのが印象的でした。

 密かに衝撃を受けたのは、McPherson Libraryで働く人の数です。なんと、200人以上の人が働いているとのこと。その内訳は、司書25人、常勤司書補約80人、アルバイト約100人のようですが、福島大学附属図書館の人数の10倍近い人数ということになります。

 この人数の多さのおかげでもあるのでしょうか(そればかりではないと思いますが)、司書の25人は専門性の高い仕事に従事しているようです。具体的には、①選書、②書誌の新規作成、③レファレンス、の3つを行うということでした。また、分野を50ほどに分け、司書の各人がそのうちの3〜4つを担当して選書やレファレンスを行っているようです。司書の専門性が高く認められており、司書自身も強い自覚と責任を持ってサービスを行っているように感じられました。特定の分野を担当するということで、常にその分野に対する知識を深めることも求められていると思われます。

 では、このように担当の分野を抱えている司書はどのように能力の向上を図っているのかというと、主に各々の所属する図書館協会や担当分野の学会等の総会、講習などに自分で出かけていくようです(研究費の特典あり)。また、今年から専門分野の参考資料などを同僚同士で教えあうセミナーも開始しているとのことでした。

 福島大学附属図書館においても、これから図書館内における学習会を予定していますが、自らの知識を高める努力をしていかなくてはと感じています(個人的には英語の能力もですが……)。

 今回の訪問では、海外の大学図書館をみるという機会を得ることができ、司書の専門性などについて改めて考えさせられ、本当によい経験になりました。

 この訪問で見聞きしたことで自分の考えを広げて、これからの仕事に役立てていきたいと思います。

書燈目次へ