『人事労務管理の歴史分析』 ミネルヴァ書房 2003.03
熊沢 透(経済学部助教授)
今日の経済社会に対して検討のメスを入れようと試みたとき、私たちはどのような方法を採りうるでしょうか? 「労働問題・労使関係」を守備範囲とする私たちは「戦後日の人事労務管理の展開過程を、諸制度の相互の連関に留意しながら、主に1950年代から60年代に焦点を当てて総合的に解明すること(序章)」を通じて、現在の労働関係を歴史的に相対化することを目指しました。
この本に結実した研究会において共有されている問題関心は、システムに溶かし込まれた各主体の「理念」・「思想」・「公正観」といったものを析出し、その展開を「制度」生成のダイナミズムのなかに然るべく位置づけることで、戦後労働史・労務管理史を再構成しよう、ということです。テーマに即していいかえれば、「日本的雇用慣行」と呼ばれるものを、単に目的合理的な手段の体系としてではなく、各主体合作の歴史的構成体として捉え直してみようというわけです。
事例分析に力点がおかれているため、迂遠で些末な叙述が続くように思われるかもしれません。しかし、これはまだまだ
「前提的作業」です。多様な分野の学究諸氏に対していささかでも有益な示唆と含意あれかしと思います。
(請求番号336.4/Sa16j) |