『書燈』 No.20(1998.4.1)

前記事⇔⇔次記事


姉妹校、ヴィクトリア大学  (経済学部 美馬武千代)


 私は、海外の留学先として、福島大学と学術交流協定を締結している(いわゆる姉妹校)カナダのヴィクトリア大学を選んだ。この大学を選んだ理由はいろいろあるが、第一は、私の同僚がかつて留学しており、その大学の実状がわかっていたことである。その後、ヴィクトリア大学のウィル教授が本学に短期で留学したり、姉妹校の締結以来、学生間の交流も進み、知人も数多くできていた。そのため、見知らぬ大学というよりは、本当の意味での姉妹校に行くのだという安心感があったからである。

 第二の理由は、大学のあるヴィクトリア市が風光明媚な上に、気候温暖で治安もすこぶる良いと聞かされていたからである。実際に約1年半住んでみての感想も、話しに聞いていた以上のものであり、大変気に入った。夏は昼間が長く、27度前後のからっと晴れた日が続く。湿度が低いため、汗をかくことはなく、昼間に飲むビールの美味しいこと。風光明媚であることは、カナダの有数の観光地になっていることからも明らかで、シーズンには日本の観光客もたくさん来ている。この他にも、親切で温和な人が多いことやビジネスがあまり活発でない田舎都市のような雰囲気がとても魅力的に思えた。また、私達夫婦のアンティーク趣味を満足してくれる小さなお店がたくさんあったのは望外の喜びであった。

 ヴィクトリア大学は、ダウンタウンから数キロ離れた海辺に近い閑静な場所にある。広さは381エーカー(1,541,907㎡)と、福島大学の約3.6倍である。ここに、約15,000人の大学生や大学院生が学ぶ、カナダでは中規模の大学である。大学の周囲には手入れされた庭園やジョギング道路が整備され、市民の憩いの場所として親しまれている。キャンパスの中には野兎やりすがあちこちで見られ、手渡しで餌を食べるほど人懐っこい。天気の良い日には、芝生で日光浴を楽しんだり、スポーツを楽しむ学生ののんびりした光景が見られる。

 キャンパスのほぼ真ん中に、4階建ての大きな中央図書館がある。地下にも大きな書庫があり、規模も大きい。大学案内書によると、この図書館には、本が160万冊、マイクロフィルムが170万アイテム、その他、雑誌、レコードなど多数の学術資料が納められているとのことである。この他にも、教育学部や法学部は学部独自の図書館をもっている。ユニークな図書館は、6万以上の地図や8万以上の地域の写真を蔵した地図図書館である。

 私の属した経営学部には、電子図書館というシステムが整備されており、1,200以上の出版物のデータベース(生資料とそれを要約したもの)にコンピュータで直接アクセスできるようになっている。学生は授業のプレゼンテーションのため最新の情報を必要とするときは、図書よりはこのシステムから資料を収集している。学生には、いつでも自由に利用できる(相当混雑することもあるらしい)コンピュータ室が用意されており、メールのやり取り、資料の収集、レポートの作成など、コンピュータ室の利用頻度は極めて高い。

 図書館の蔵書を検索するときは、インターネットで大学のホームページからアクセスする。借りるためには、大学の一員であるという写真入りの証明書(学生の場合は学生証)であるメンバーカードが必要であり、有料で作った。借りるためには少し時間がかかるらしいが、私の場合は、幸い、研究室の前に優しい秘書のお嬢さんが居り、本のメモを渡しておくと、電話で図書館と連絡をとってくれ、大変楽であった。お茶には呼んでくれるし、コピーサービスも引き受けてくれるなど、大学での生活を支えてくれた彼女には本当に感謝している。日本に来たら案内することを固く約束したのだが…。

 図書館の前には噴水と広々とした芝生の庭があり、昼間の時間に学生や職員がベンチや芝生に座ってお弁当を食べている姿が思い出される。機会があればもう一度訪ねてみたいものである。

ヴィクトリア大学経営学部の校舎


lib@mail.ipc.fukushima-u.ac.jp

書燈目次へ