『日本を問いなおす』
岩波書店 2002.10
(いくつもの日本Ⅰ)
工藤 雅樹 共著 (行政社会学部教授)
本書のタイトルには、日本の文化や歴史を単一のものとする傾向があったことに対する反省の意味がこめられている。南北3500キロに及ぶ日本列島には、さまざまな気候風土の地域がならびたっており、それぞれに特色のある文化と歴史を育んできた。それにもかかわらずこれまでの日本文化論・日本人論、そして日本歴史そのものも、そのような違いを無視し、もっぱら飛鳥・奈良・京都を中心とした地域の文化こそが日本文化であり、この地域の歴史が日本歴史の基準とされてきた。日本は単一の民族からなるという議論の根もこのような考えに起因する。
本書ではこのような立場を踏まえて、筆者も含めての10名が考古学・民族学・歴史学などそれぞれの面から「いくつもの日本」を論じている。
ちなみに筆者は「蝦夷とアイヌ」のテーマで、民族としてのアイヌの成立を考え、古代の蝦夷とはアイヌ民族と日本民族がそれぞれ歴史的に成立する過程のなかで理解すべきことを述べている。
(請求番号210.1/A32n) |