福島県内大学図書館連絡協議会(以下「協議会」)は、1985(昭60)年2月、県内における「加盟館相互の緊密な連携と協力により、図書館の施設、管理、運営などについての進歩、改善を図ることによって、地域社会の進展に寄与すること」(「同会会則」第3条)を目的として発足しました。現在、県内の大学図書館11館及び福島県立図書館並びに福島工業高等専門学校図書館を合わせた13館により構成しています。また、協議会では、1999年度から会誌『福島県内大学図書館連絡協議会誌』(年刊)を発行して活動報告を行っています。
なお、幹事館は、福島地区、郡山地区、いわき地区、会津地区の4地区の1年交代制で選出され(ただし、被選出回数は、いわき・会津地区の1に対して福島・郡山地区は2)、総会(年1回)その他の会務を処理しています。また、事務局は、福島大学附属図書館が務めており、併せて「相互利用制度」の事務局及び「実務者研修会」の世話人も行っています。
さらに協議会では、各館に所属する研究者の研究・教育活動に資するため、県内の公共図書館19館を加えた「相互利用制度」(「福島県内大学図書館間相互利用制度」、1989.10発足)を実施しています。このほか、1994(平6)年からは、加盟館の図書館職員が主体的に研鑽する場として「実務者研修会」を毎年開催しています。
福島県内大学図書館間相互利用制度(以下「相互利用制度」)は、県内の大学図書館等で構成された「福島県内大学図書館連絡協議会(以下「協議会」)」が設立の母体となっています。1988(昭63)年に開催された協議会総会において、相互利用制度検討委員会の設置が確認され、その後、鋭意検討が進められました。1年後に開かれた同総会において「相互協力協定書」ほか4件の成案が承認され、1989年10月から正式に相互利用が開始されました。その後、1992年の協議会総会において、相互利用制度への県内の主要市町立図書館(市立9、町立1)の参加が承認され、設置機関または館種の違いを超えて、ほぼ県内全域の図書館が相互協力する体制が整っています。
また、この相互利用制度は、協議会加盟図書館(13館)及び参加県内公立図書館(19館)相互の間で、各館に所属する研究者の研究・教育活動に資するため、各館の相互協力を一層充実させることを目的に作られおり、図書館自体及び各館が認定する研究者を対象として、各館所蔵の図書・資料の閲覧、現物貸借、文献複写、参考業務を行っています。そのための協約は、「相互協力協定書」「相互利用実施要項」、三つの「実施細則」及び「申し合わせ」とから成り、1995年度には後3者を整理し、後2者を「福島県内大学図書館間相互利用実施に関する申し合わせ」に一本化しています。
なお、この相互利用制度は、他の主題別・地域別相互協力組織等の制度と比較して、とりわけ「先進的なシステム」と評される次の4つの特徴をもっています。①当初は、公立図書館は県立図書館1館のみでしたが、1992年度からは県内公立図書館の参加により、大学図書館と公立図書館間という異種図書館間の相互利用制度が確立しました。②相互利用の中核は何と言っても現物貸借です。また、所蔵調査、所蔵機関調査及び書誌的調査等の参考業務は、相互利用の前提ともなるものであり、これら業務をも加え、相互利用の範囲を広いものとしています。③当然のことですが、設立機関、設置目的等の異なるいわゆる異種図書館間の相互利用制度となりますので、貸出条件等において各館の規則・事情を最大限尊重するように配慮しています。④「共通利用証」の発給を自動的に受けられるのは、協議会加盟大学の教職員、大学院生です。これに準ずる者も図書館長の認定によって研究者扱いができます。このことによって大学の理工系学部に所属する技官や実習助手のほか、いわゆる在野研究者の大学図書館の利用を可能としています。その際、申請者の研究内容そのものを最も重視し、研究機関に所属しない「地域にあって高度に専門的な研究に従事する者」をも図書館長の判断によって、「研究者に準ずる者」として扱い、「共通利用証」を発給できることとしています。
福島県内図書館全体のまずしさ、その地域的偏在及び各館の零細さが、この相互利用制度成立の主動因とはなっていますが、それ自体が相互利用にとっては制約条件であり、大学図書館についてみれば、低調な利用実施状況及び他相互利用制度・他県への高い依存が示すように、研究図書館として県内にアテになる図書館はなく、この相互利用制度の発展の余地はまったくないかのようにも思われます。この相互利用制度に加盟・参加する図書館が、それぞれに相互協力を結ぶ主題別、地域別、機関内等の協力組織を主としながらも、この相互利用制度を、所蔵図書館資料の活発な相互利用、目録・所在情報の提供及び情報検索サービスの提供等の参考業務サービスの展開によって、それらを補完する有力な一地域協力組織として発展させる必要があります。
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